【ネタバレ注意】シン・エヴァンゲリオン劇場版考察~シンジはなぜ再びヴンダーに乗ったのか?~

 2021年3月8日

ついに劇場版のエヴァが完結しました。

初めて序を見てからはや14年。自分にアニメの面白さを教えてくれたこのエヴァという作品の終わりを見れたことを素直にうれしく思います。

シン・エヴァンゲリオン劇場版の中盤では、失語症になってしまったシンジが復活し、再びヴンダーに戻ります。しかし、つらい思いをしたはずのヴンダーになぜシンジは戻ろうと思ったのでしょうか?なにがシンジを成長させたのか?その理由を考えてみたいと思います。

盛大にネタバレを含みますので、未視聴の方はお気をつけください。

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いつの話?

 Qのラストにて、13号機コックピット内でカオルの爆死を間近で見てしまい、さらに自分のせいで世界がめちゃくちゃになってしまったことを知ってしまったシンジ君は、心身ともにショックを受けてしまい、失語症になってしまいました。

しかし、黒綾波との会話、トウジやケンスケ、アスカとの触れ合いの中で徐々に回復していき、最後の戦いに向けて自らヴンダーに戻る決断をしました。

ヴンダー帰還後、鈴原サクラも話していました。(台詞はあいまいです)

「マギコピーにはDSSチョーカー作動の記録が残っており、これが意味することはシンジさんが隣でパイロットの爆死を見ているということです、そんなつらい経験をしたのになぜヴンダーに戻ってきたのでしょう?」

確かにその通りです。物語の都合と言ってしまえばそこで終わるのですが、旧劇場版ではあれだけエヴァに乗れと言われたのに最後の最後までエヴァに乗らなかったシンジ君です。舞台や経験が違うからと言って、そんな簡単にトラウマを克服するでしょうか?私たちの知っているシンジ君はそんな強い少年だったでしょうか?そこには何か理由があるはずです。その要因を考えていきましょう。

 

考えられる要素は?

①黒綾波との別れ

誰もが息をのんだシーンでした。第3村にもなじみ、徐々に人らしくなっていった黒綾波の死は非常に悲しいものでした。よく言われることは、シンジ君がヴンダーに戻った原因はこの黒綾波との別れです。確かにこれも大きな要因だとは思いますが、果たしてそれだけでしょうか?私は最初にこのシーンを見た時、またシンジ君が吐いてしまうと思いました。ですので、これだけが原因とは少し考えにくいのです。

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②加地リョウジ君との出会い

ケンスケの紹介で出会った、ミサトさんと加地さんの息子である加地リョウジ君もシンジ君の心境に変化をもたらしたとも考えられます。彼はシンジ君と一応同い年?とはいえ「次世代」ともいえる存在です。後のケンスケとの会話でも触れますが、彼らを守りたいという心もシンジ君の中に芽生えたのではないでしょうか?シンエヴァは、「次世代」というキーワードが重要になっている作品とも感じます。

③トウジやケンスケとの会話

加地リョウジ君との出会いの後、車の中でケンスケはシンジ君にミサトさんの考えを伝えます。前述した加地リョウジ君との出会いと、ミサトさんの思いを知ることで彼の中の覚悟も決まっていったように思えます。

「つらいのはお前だけじゃない、ミサトさんも苦しんでいる」

さらにケンスケとはアスカも一緒にケンスケの父親のお墓参りにも行きます。

「もっと親父と話しておけばよかった。碇、お前も父親と話せよ」

ここでゲンドウと話をしなければならないと感じたのかもしれません。

トウジからは「落とし前」というキーワードが出ます。

「自分のやったことには落とし前をつけなあかん」

ここでのトウジの台詞は、シンジ君に向かって言っているわけではなく、自分自身に言い聞かせている感じでしたが、結果的にシンジ君にも刺さったのかしれません。意識的ではないにせよニアサードインパクトを引き起こし、結果的に人類はほぼ滅亡。大地も赤くなってしまい、Qでは良かれと思ってやったことがすべて裏目に出てしまい、友達であるカオルも死んでしまった。すべてが自分のせいではないけれど、それでも自分がやったことには変わりないため、その「落とし前」をつけなければと思ったのかもしれません。

 

④土のにおい

シンジ君が田んぼに座っている時、不意に「土のにおい」を感じます。土のにおいといえば思い出すシーンがあります。それは「破」で出てきた加地さんとの会話シーンです。

「何かを作る、何かを育てるっていいぞ。いろんなことが見えるしわかってくる。」

「つらいことを知っている人間の方がそれだけ人にやさしくできる。それは、弱さとは違うからな。」

「葛城を守ってくれ。それは、俺にできない、君にしかできないことだ。頼む。」

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色々ありましたが、シンジ君がヴンダーに戻る決断をしたのはここではないでしょうか?シンジ君は土のにおいを感じて、加地さんとのこの会話を思い出したのだと思います。そして終盤のミサトさんとの会話で、この「土のにおい」の話をしていることからも大きなきっかけとなったと言えると思います。

ミサトさんを守る。加地との約束、そして直接言った「ミサトさんの重荷を半分引き受ける」という発言。

さらに、シンジ君が直接経験していることではないですが、加地リョウジ君をはじめとして出てくる「次世代」を守りたいという気持ち。

つらいことを知っている自分だからこそ、他人に優しくありたい。

加地はサードインパクトを止めるために犠牲になったとケンスケから伝えられています。遺言ともとれるこの会話をもとに、「守る」決意を持ってシンジ君はヴンダーに戻ったのだと思います。

まとめ

シン・エヴァンゲリオンは、このように見逃してしまいがちだけれども物語をつなぐ細かい描写が本当に随所にちりばめられています。特に思うことは、各キャラの無言のシーン。こればかりは観ている私たちがその穴埋めをしなければいけません。ループやアスカのオリジナルについて考えるのも面白いのですが、この映画に込められたメッセージ、庵野監督の想いを汲み取るのも楽しんでいただきたいです。

そして今までは弱いと思っていたシンジ君も本当に成長していることが目に見えてわかります。カオルも最後に言っています。「きみはもうすでにリアリティの中で立ち直っていたんだね」と。見ていてすごくうれしくなりました。もう「シンジ君」ではなくて「シンジさん」と呼ばなくてはなりませんね。

 

 

 

 ほかにも考えていますので、よろしければどうぞ

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