【ネタバレあり】「ゴジラ-1.0(ゴジラ マイナスワン」の感想と解説と考察。

2023年11月3日に公開された、「ゴジラ-1.0」。

ゴジラ』シリーズでは37作目であり、国産の実写作品としては通算30作目。『シン・ゴジラ』以来7年ぶりとなり、ゴジラ生誕70周年記念作品と位置付けられています。
監督は、「ALWAYS 三丁目の夕日」シリーズをはじめ「永遠の0」「寄生獣」など数々の話題作を生み出してきた山崎貴で脚本・VFXも手がけています。
今回は、公開から数日たって映画を鑑賞してきましたので、その感想、また解説と考察をしていきます。
盛大にネタバレを含む内容になりますので、未鑑賞の方はご注意ください。

結論

嫌いです(笑)。世間ではかなり高評価な映画で、「ゴジ泣き」というワードもトレンド入りするほど。レビューサイトやYoutubeで絶賛の嵐です。

逆張りと思われるかもしれませんが、映画館で観たことを公開したのは久々でした。宮崎駿監督の「君たちはどう生きるか」を見た時もなんとも言えない気持ちになりましたが、今回の「ゴジラ-1.0」はハッキリと後悔しました。

もちろん良いところもたくさんありました。日本映画でゴジラの怖さをしっかりと表現できているところも良かったです。ただ「シン・ゴジラを超えた!」とよく言われますが、私個人的には「シン・ゴジラ」の方が何倍も好きなので、ここは好みの問題なのかもしれません。

 

 

良かった所

序盤の展開

物語冒頭からまだ小さめのゴジラが出てくるところなどはすごくよかったです。描写から戦争終末期であることは容易にわかりますし、暗闇から突如出てくるゴジラの恐怖とその生々しさ。かなり怖い描写でした。

ここまで明確に人間を狙っている描写はGMK(ゴジラモスラキングギドラ 大怪獣総攻撃)以来ではないでしょうか?人間を憎んでいるというよりは、かなり凶暴な生物という感じがして、妙なリアリティも感じます。

 

 

ただ、人間をパクっと食べて、そのまま飲み込むか噛み千切るのかと思いきや、ポイっと放り投げたのはなんででしょうか?どうせならそのまま捕食したほうが恐怖感は増しそうです。「進撃の巨人」の序盤で巨人がなぜ怖いか。それは捕食するからです。それだけ人間が食べられる描写は恐怖が伴います。今までとは違うゴジラの恐怖感はもっと出せたとは思います。

戦争終結後の描写

無惨にも焼け野原になった東京。神木くんのPTSDの描写など。戦争は終わってもまだまだ人々残された傷は深く。特攻隊でありながら生きて帰ったことを恥だと言われる。およそ現代の私たちからは理解できない完成でありながら、かつての日本であったこともわからせられる。

このあたりはゴジラというより人間ドラマが主でしたが、個々のキャラクターはともあれ、こういう描写は上手だなと感じました。

CG・VFX

シン・ゴジラ」では、フルCGのゴジラが描かれ、着ぐるみとはまた別の良さがありました。今回のゴジラもCGでしたが、その荒々しさや、何よりも近いんですね!スクリーンや登場人物に近く、それでいて結構激しく動くので、迫力があります。海でのシーンがメインではありましたが、その恐怖は映像から十二分に伝わってきました。

 

 

残念ながら良いと感じたのはここまでです。以降はマイナスポイントを挙げていきたいと思います。

 

 

良くなかったところ

佐々木蔵之介さんの演技

私が邦画で嫌いな所なのですが、演技しすぎというか、やりすぎというか、ああいうキャラ設定にした監督が悪いのですが、鼻につく喋り方やわざとらしい笑い。昔の江戸っ子風と言えばそれまでなのかもしれませんが、最後までとにかく嫌でした。しかもセリフが多いので、正直きつかったです。

また、これは佐々木蔵之介さんだけではなく、例えば作戦を説明しているシーンでモブの皆さんがヤジを飛ばしたり、「そうだそうだ」みたいな顔でうなずいているのも好きじゃないです。演技が強すぎて逆にリアリティがないというか。もう少し自然体で観たかったです。

設定がガバガバ

2時間の映画なので、すべてにおいて説明してほしいわけではないのですが、せめて映画の中に自分の中で腑に落ちるような描写が欲しいと思ってしまします。

例えば、「ゴジラはなぜ日本に来るのか?」

だれか教えてもらえないでしょうか?神木くんの「ぼくの戦争はまだ終わっていない」に掛けていることは何となくわかります。ただ彼は特攻から逃げ、島でゴジラと遭遇しましたが一瞬です。神木くんの中の戦争とするならばあまりに急な展開ではないでしょうか?そしてまた劇中で誰もゴジラがなぜ日本に来るのかを疑問にしていません。確かあったのは、2回目も来るだろうと話をしている時に、おそらく縄張りと認定されたという推測のみです。だとしたらゴジラは災害か何かなのでしょうか?そのような存在に原爆を彷彿とさせる熱戦や爆発描写をいれたのでしょうか?ちょっと理解できません。

「そんなバカな」が多い

最後の海に沈める作戦を言っているのではないです。ご都合展開が多くて真面目に見ていいのかどうかわからなくなります。

特に嫌だったのは浜辺美波さんの銀座でのシーン。まず列車で一人だけ生き残ったのはヨシとしましょう。あそこであっさり死んでても絶望感があってよかったとは思いますが、海に落ちて、何とか助かったと思った次のシーンでまさかのゴジラの進行方向に向かって逃げている。なぜ!?一体どういう逃げ方をすればそこに行きつくのか。

そしてあれだけの人込みを逆走してなぜかピンポイントで浜辺美波を見つける神木くん。「そんな馬鹿な」と思うと同時にアホらしくなります。ですが、この後熱戦を吐くのですが、これ見よがしにビルの隙間のそばにいるので、ここに二人で入るんだろうなと思いきや、まさかの自己犠牲パターン。まあここの絶望感は終盤でひっくり返されることになりますが、私は絶対に浜辺美波はあそこで亡くなっていたことにすべきだと思います。正直電報が来たシーンで嫌な予感がしていたのですが、まさか当たると思っていなかったので二重の意味でガッカリです。

そう思う理由がゴジラの恐怖の描写です。ゴジラは銀座を破壊しつくしていました。その中での犠牲者は何万人規模で、まさしくゴジラの恐怖を一番感じるシーンだと思うのです。そんな中でご都合展開を見せられたり、最後に生きてましたとされると正直冷めます。あと細かいですが、なぜ銀座なのでしょうか?浜辺美波が銀座で働いていたからなのでしょうか?神木くんがどこに住んでいたのかわかりませんが、1回目に相模湾から上陸したならまあまあの距離ですし、東京湾から入ったなら、なぜ2回目は相模湾なのか?いくら戦後とはいえあそこまでラジオがあるならもっと早く情報が伝わるだろとか、余計な突込みばかり頭に浮かんで集中できませんでした。

リアリティを描きつつも都合の悪いところはご都合展開でさらっと済ます。こういうのが嫌いなんです。

敬礼

この作品中で一番訳がわからなかったシーンです。

あの敬礼は誰に向かってしていたのでしょうか?

まさか神木くんに対してでしょうか?さすがにゴジラじゃないですよね?とすると相模湾で陽動作戦をしていて犠牲になった人たちでしょうか?作戦前に一人の犠牲者も出さないと意気込んでいたのは何でしょうか?

踊る大捜査線じゃないんですから、もしそうなのならあそこは感動シーンではなくギャグシーンということになってしまいます。

あと神木くんの特攻前の演出はなんだ?インデペンデンスデイ見てるのかと思ってしまいました。ついでに言うと戦闘機は爆弾を積む代わりに兵装と燃料を減らしているって言っていませんでしたっけ?すごい長時間飛べるんですね。

援軍登場シーン

最後に「小僧」と呼ばれていた人が仲間集めてくるシーンはすごく嫌いです。スターウォーズEP9ばりのクソ展開ですし、あの人たちは何なのでしょうか?

あとゴジラを浮上させてからどうするつもりだったのか?作戦はあくまで急潜行、急浮上の圧力差で倒すだったはず。あんな船でゆっくり上げても絶対意味ないし、ロープ連結だけですごい時間かかりそうです。あそこからは完全にグダグダでしたね。

それと「小僧」の人がなんであんなに人を集めることができたのかも謎です。そういう伏線ありましたっけ?こういう何の脈絡もない展開はちょっと...

 

 

まとめ

まだまだあるのですが、ひとまずこの辺にします。

楽しめた方も多いようですが、個人的には好きになれない作品でした。なんかもったいないという感じがすごいします。陳腐な表現ですが、もっとすごい作品になりそうなのに、これじゃない感。

私が「シン・ゴジラ」で感じた恐怖は、日本が破壊されるという恐怖、得体のしれない怪物に勝てないという恐怖、アメリカはじめ世界から見捨てられるかもしれない恐怖。そういう根源的なものでした。もっと振り切った作品が見たいものです。