【ネタバレあり】「シン・仮面ライダー」のドキュメンタリーを見た感想と解説と考察。

2023年3月18日に公開された、「シン・仮面ライダー」。
庵野秀明監督の最新実写映画であり。「シンゴジラ」から続く「シン」シリーズの一環でもあります。
今回は、NHKで放送されたドキュメンタリーをみた感想です。
ネタバレを含む内容になりますので、未試聴の方はご注意ください。

はじめに言っておきましょう。この作品自体、映画として面白いかと問われれば、面白くはないと答えるでしょう。そして、万人受けする作品ではないことも間違いないでしょう。ガッカリしたという意見も良く見ます。

ファンの多い仮面ライダー。純粋な特撮好きもいれば、生粋の仮面ライダーオタクもいる、しかも初代となると当時を見ている人は今や色々な人生経験を経ている。しかも監督は庵野秀明エヴァで悪名高き名監督。普通の作品になるわけがない。

現代風のスタイリッシュな仮面ライダーを想像していると裏切られるのは100%。それなのに人は勝手に期待して、自分の思っているものとは違うものなら「これだから庵野は」と批判する。面白いですね。

ではこのシン仮面ライダー、何が良かったのか?

全部じゃない。一部ですが「すごくカッコいい」。
シンゴジラは?「全部いい」。
シンウルトラマンは?「所々いい」。

作品の感想なんてものはその人の健康状態、精神状態、いつ見るか、誰と観たかで全くことなるもの。私はこの作品を「仮面ライダーだから」ではなく、「庵野作品だから」という理由で見ました。

当然私も庵野作品に打ちのめされたことはあります。「旧エヴァ」では軽い鬱アタックをくらい、「旧劇場版」ではとんでもないものを見せられ、「Q」では初見時に生まれて初めて金返せとも思いました。

 

 

しかし、いつから自分の目線が変わったのだろう?おそらく「シンエヴァンゲリオン」のドキュメンタリーを見てからだと思います。

その時感じたのは、「ああ、この人は純粋に面白いものを作りたいんだな」ということです。確かに今の時代ではパワハラと呼ばれるものもあるかもしれない。でもやっぱり皆ニコニコ、ホワイトな環境ではいいものは生まれない。その道のプロと言われる人が頭ひねり散らかして絞り出したものが、少しだけ人に影響を与えるんだな。そう思いました。

今回のドキュメンタリーはやはり現場は大混乱。この光景はシンエヴァのドキュメンタリーでも見ました。全員少しは予習してこいよ。前田真宏や山下いくとが出てくると安心します。この人たちは経験者ですから。カメラ何台もつかうのも知ってる。絵コンテ使わないのも知ってる。現場でひっくり返るのも知ってる。

アクションの田淵さんが途中キレてましたけど、たぶんこの人は少し見誤ったのでしょう。それは、序盤の「大野剣友会みたいな」という言葉を受けて、その通りにしようとしたこと。当然この人もアクションのプロ。実績もある人なのでしょうけど、庵野秀明に関しては初心者。たぶん本質が違うから、自分の持っている最大限のアクションをぶつけた。それが初代の踏襲~現代風のアレンジ。でもそれが違う。

 

 

この人はアマゾンズの人だそうで。私はアマゾンズ好きです。バイオレンスが好きなのではなくて、あの野生感が好きなんです。おっさんの役者が声振り絞って、死ぬ気でやっているように見えるから好きなんです。アマゾンズの殺陣は別にそんなに印象に残ってないので、なんとも言えませんが、やはり特撮で殺陣といえば「牙狼」でしょう。

牙狼のアクションは凄まじいし、何よりほとんど役者がやっています。その代わり初期のドラマ部分なんて見れたものではありません。役者の演技は棒。よくわからない厨二設定。終盤はすごくよくなってくるんですけどね。

また、これはシン仮面ライダーの主役でもある池松壮亮さんも言っていましたが、「アニメーションに勝てるのは肉体感と生っぽさしかない」という言葉が物語っていると思います。

 

 

田淵さんはドキュメンタリーの中で、「スタントマンは表情必死に作っているけど、覆面で見えないから」、と言っていましたが、そこじゃないと思うんですよね。なんか体から出る気迫というか殺気というか、そういうものがあって初めて見ている人に届くんじゃないのかなと思います。私が今作でモブの顔を映さなくて正解だと思ったのは、そういう悪い意味での「演技」が嫌いなんだと気づかせてくれました。

例えるならプロレスが近いのかもしれません。私はプロレス大好きなんですが、総合などの格闘技好きな人から見ると、あんなのはショーだ、八百長だとかいうかもしれませんが、私は全くそんなこと思いません。確かにアングルもブックもありますが、大事なのはそこじゃなくて、レスラーが心から見せる気迫、怒り、それらすべてがリング上で爆発するから面白いのです。見ている側もどんどん高揚していくような。時には勇気づけられるような。おそらく感情移入して涙を流すような試合というのは格闘技ではプロレスだけなのかなとも思います。

もしかすると庵野監督もそんな役者の心からの演技が撮りたかったのかもしれません。だから、ドラマ部分やストーリー部分はそんなに面白いものではない。何なら長澤まさみが一番よかった。あのぶっ飛んでいる感じが良かった。ラストの戦いもガメラがグラグラしていること以外は結構よかった。ちなみにカメラグラグラはよくある手法らしいのですが、個人的にオビワンケノービのドラマでの悪印象があるため、嫌いなだけです。

たぶんこのドキュメンタリーを見て、庵野監督が嫌いになる人は、庵野作品向いてないです。でもそれが悪いことだとは全く思いません。人の好みはそれぞれですから、嫌なら嫌でいいと思います。でも好きな人は好きです。私は庵野監督の思いは少しだけわかります。あの撮影現場にいたいか?と言われるといたくはないですけど、それでもこの監督が作る作品は他のものとは違う。貴重な経験をさせてくれると思うので好きです。

本当は映画を見ている段階で気が付ければいいんですけどね。中々その域には到達できませんね。たぶんこれからもできないでしょうけれど。かといって、シン仮面ライダーを二回見に行く元気はないので、Amazon Primeに追加されたときにこのドキュメンタリーを思い出しながら、再び見たいと思います笑

もしこの映画を見ていい気分になっていない人は、一度ドキュメンタリーを見てみることをおすすめします。それでもまだ嫌だったら、そういうことなのでしょう。

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