十二国記【最新ネタバレ/考察】 西王母の発言の真意とは?

本記事は十二国記新短編集 1話無料プレゼントである、『幽冥の岸』ネタバレ/考察です。今回は、再登場した西王母の発言を深堀りしていきたいと思います。

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『幽冥の岸』ではまさかの西王母が再登場してきました。今まで一度だけ登場したことのある西王母、神の域の人物であり、その詳細は謎に包まれています。加えてその無表情かつ感情の無い言葉からは、なかなか真意が伝わりません。今回は少しでもその真意を紐解きたいと思います。

 

西王母について

西王母とは?

西王母(せいおうぼ)とは、中国で古くから信仰された女仙、女神です。
西方にある崑崙山上の天界を統べる女性の尊称であり、すべての女仙を支配する最上位の女神なのです。

十二国記では?

基本的に天界は人界に属する者と接触しません。唯一人界の者が立ち入り可能な蓬山でも、碧霞玄君が間に立つため、直接神々と接触することはよほどの重大事でなければ不可能です。その中で西王母は、蓬山を含む五山の主で女神の長です。かなり上位に位置する神の1人であり、滅多に人前に姿を現すことは無く、稀に碧霞玄君の手に余る事態の場合に限り登場します。碧霞玄君が絶世の美女と表現されていることに対し、西王母は意外にも凡庸な容姿でした。かつて、十二国世界に戻ってきた泰麒の病を祓ったことがあります。

西王母再登場の伏線はあった?

実は、「白銀の墟 玄の月」4巻の終盤に西王母再登場の伏線がありました。驍宗奪還後、李斎が語っていた文にあります。

前回と同様に伝説の女神の無情、天という存在の理不尽さと胡散臭さを再確認しただけだ。

『幽冥の岸』の岸は、この前後の短い文章、李斎が蓬山に行って帰ってきたという地の文の詳細を描いた話だったのです。正直少し読み飛ばしていた部分でもあったので、まさか短編集で読むことができるとは思いませんでしたね。

 

 

 

西王母の真意を紐解く

宿痾とは

前回の記事でも書いた通り、この話のテーマの一つは「宿痾」という言葉だと考えています。日常生活では舞う使用しない、難しい単語ですが、その言葉を分けて考えていくと、意外と見えてきます。

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宿痾の意味は?

2の文字を分解してみると、

「宿」:「やどる」「やどす」「以前からの」という意味があります。
「痾」:「やまい、病気」という意味になります。

つまりこのこれらを組み合わせると、「ずっと前からの持病」「長い間治らない病気」
ということになります。

これらを泰麒に当てはめた場合、「ずっと前からの持病」という意味は少しニュアンスが異なります。泰麒は以前から病気だったわけではありません。蓬莱から帰還した時には怨詛に苦しんでいましたが、それは当の西王母によって取り払われているからです。

では、「長い間治らない病気」はどうでしょう?これこそ泰麒が現在置かれている状況に当てはまる言葉であると考えらえます。

泰麒の罪とは?

しきりに言われる「泰麒の罪」とは何でしょうか?

それは言うまでもなく殺人です。ただでさえ人を殺めるということは重罪に値します。加えて泰麒は麒麟。慈悲の化身でもある麒麟が自らの手で殺人を行ったという大罪です。

「驍宗を救い出すにはあれしか方法がなかった」や、「あの場でまさか麒麟が武器を持つとは誰も思いつきもせず、お掛けで助かった」という李斎や耶利の言葉は、あくまで片方の側(泰麒側)からの意見です。理由はどうあれ、泰麒が殺人を犯したという事象は変わらず、加えて蓬莱出身である泰麒は、その罪の重さも理解しています。麒麟であるという性も加え、これから一生をかけて苦しみ続ける、「長い間治らない病気」ということになると考えられます。

なぜ西王母は泰麒を助けたのか?

しかし結局今回も西王母は泰麒の怨詛を祓いました。なぜでしょうか?

それは今回の怨詛(=病)が天の理に反するものではないからです。

麒麟が病にかかるのは、唯一「失道」であると決まっています。

「失道」とは王が道を踏み外し、天の理に背いている最中に麒麟に降りかかる病の事ですが、驍宗は道を踏み外しているわけではありません。そして麒麟の犯す殺人も天の理に背いているものではないからです。これは碧霞玄君の言葉からもわかります。

麒麟による殺傷は過去に例のないこと、あってはならない罪過でございましょう。いえ、そもそも不可能なことだと存じておりました。

ですが不可能ではなかった。ならば天がそのようにお造りになったのでございます。

泰王の咎でもございません。これは失道ではありませぬ。

つまり、麒麟が病で死ぬということは失道以外ありえないということであり、それが天が決めたルールだということです。十二国では天によって定められたルールがすべてなのです。泰麒がもしこのまま怨詛によって衰弱死してしまった場合、それこそ天が自ら定めたルールを破ることになってしまいます。だから西王母は「仕方ない」といって泰麒を治療したのです。

そのかわり、泰麒の罪の意識は今後も自分を苦しめることになるだろうと言ったのではないでしょうか。

 

天のルールは複雑かつ明解

十二国の基盤となっている天のルール。これはおそらく驍宗や泰麒が登極した際、歩くたびに脳裏に聞こえてきた声により体に刷り込まれているようなものであると考えられます。自動的に発動するプログラムのようなものが体に刷り込まれているのです。だから「覿面の罪」というものもあり、逆に罪に抵触しない範囲で裏をかくこともできると考えられます。その範囲は刷り込まれた王と麒麟であり、それ以外の人には直接影響することはないということです。

この天については作中李斎がたびたび疑問を感じています。確かに李斎ほど一般人でこの神クラスの人物に会いまくっている人もいないでしょう。今後この天のルールにはどのような種類があるのか、まとめて行きたいと思います。

 

 

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