本記事は十二国記新刊「白銀の墟 玄の月 」考察です。
ネタバレを多々含みますので、まだお読みでない方はお引き返しください。
今回は、黄昏を読んでいた時から感じていた違和感、そしてそこからくる大胆な考察をしていきたいと思います。
初めにお断りしておきますが、今回は特に明確な根拠があるわけではありません。
ほぼ妄想で書いているので、不快に思われる方もおられるかもしれませんが、最後まで読んでいただければ幸いです。
意外な黒幕とは?
結論から言います。
『花影』です。
ではなぜ花影だと思ったのかを記載していきます。
花影とは?
戴国秋官長大司寇。元藍州州宰。驍宗登極以降は李斎の友人でもあります。穏やかで人を罰するのは苦手としているが、その性分故に公正に人を裁けると驍宗が考え、大司寇に抜擢されました。
しかし公正さを保つため、驍宗はその理由を言わなかったので、気を病み職を辞す事も考えたものの、花影の負担が大きいことに気付いた驍宗は、李斎経由で本心を聞き、驍宗の意図を知った花影は職務に邁進する事になった。
阿選の反逆後は、最後まで李斎と行動を共にしていましたが、騙すような形で他国に支援を求めようとする李斎とは袂を分かちました。以降の消息は不明。
秋官とは何?
法令・外交を掌る部署。また刑罰が専門となります。大司寇はそのトップの事です。驍宗は泰麒が漣に行っている間に賊臣の粛清をしました。公にならない内々での処分において、多くの臣に処分を下す判断をするのは大司寇の仕事なのです。
なぜ花影か?
プロフィールを見ていると、すごくイイ人に見えます。
そして、花影を黒幕と裏付けるようなセリフ、描写はありません。
ではなぜ花影が黒幕であると思うのかというと、それは「違和感」です。
花影は李斎とずっと一緒におり、頻繁に登場していたにもかかわらず、今回の新刊ではほとんど触れられていません。
驍宗配下の他の人物は、過去や現在の様子が次々と明らかになっているのにも関わらず、花影には言及されていないことに違和感を覚えました。
【現状】
冢宰 詠仲 → 鳴蝕の際の怪我により宮中で死亡
天官長 皆白 → 行方不明
地官長 宣角 → 阿選によって処刑
春官長 張運 → 阿選の朝で冢宰に昇進、驍宗の復位を阻止したい
夏官長 芭墨 → 謀叛の疑いをかけられ王宮を脱出、逃亡するも、その後処刑
秋官長 花影 → ?
冬官長 琅燦 → 太師に昇進、阿選の朝の現状維持のため助言する
※上記の通り、各部門のトップで現状がわからないのは花影だけなのです。
花影と李斎が初めて話をしたのは、驍宗の早急すぎる政策に対する不安の相談でした。武人の驍宗とは正反対のキャリアであり、配下でもなかった花影がそこに不安を感じるのは当然のことに思えます。
違和感を感じたところは別に相談していることではなく、わざわざこの描写を入れていることです。花影の不安は後に驍宗の意図を李斎が伝えたことにより解消したように見えます。他国では官吏の心情まで描かれることはほぼありません。この描写にも何かの意味があると感じました。
一見相談のように見えるこのことも、見方を変えれば驍宗に対する不満にも思えます。
一度そのような目線で見てしまうとすべてを疑ってしまいます。
「李斎殿、私は怖いのです」
・泰麒を漣に行かせると驍宗が言った際に、泰麒は賢いからいずれ気づかれるとそこにいた人々に言ったのは花影。
「それでよろしいのですか?畏れながら、台輔は聡くていらっしゃいます。妙に隠すよりも、本当のところを申し上げたほうが」
・土匪の乱が、朝廷内に驍宗へ反意を抱く者の計略の可能性を李斎に伝えたのは花影。
「主上がお出ましになったのが、文州で轍囲だというのは、出来すぎではないか、という声があるのです」
・軍を半分に割かれた阿選が怪しいと言ったのも花影。
「主上は阿選殿の軍から半数を割き、文州に連れていっておしまいです。つまり、阿選殿は力を半分に削がれた」
・張運や詠仲も怪しいと言ったのも花影。その他様々な噂を李斎に伝えたのも花影。
「春官長の張運殿もそうです。以前はずいぶん、主上に批判的な声を上げておられましたし、冢宰の詠仲殿も、以前はずいぶん不安そうにしておられたのを知っています」
・鳴触後、バラバラになっている会議の中で、今起こっている事態が全く前例がなく、自分たちが絶望の中に叩き落されていることを皆に認識させたのは花影。その後阿選が白雉の足(偽)を持ってきて、自然とリーダーになりました。
「ちょっと待ってくださいまし」
「・・・こういう場合はどうなるのでございます?」
・李斎出陣前、阿選は偽王であり、偽朝である意見を伝えたのも花影。そして様々な理由から驍宗は阿選を疑っていたのではないかといったのも花影。
「阿選は偽王であり、これは偽朝です」
「主上はひょっとして、阿選が起つことを警戒しておられたのでは」
・李斎が慶に助けを求めに行こうとした際、遵帝の故事を教えたのも花影。その行為が慶王を滅ぼすことになるかもしれないと。
「才国遵帝の故事をご存じないのですか?」
「だめです。李斎、それだけはだめ」
確かにこれらのことは、少し考えれば想像つくことで、花影でなくても気づいていた人、感じていた人も作中には多くいたはずです。しかし、そのことを読者に伝える役を担ったのが花影であったことは、ただの描写なのでしょうか?
そもそも花影は、なぜ李斎に相談したのでしょうか?
花影は秋官長、かたや李斎は瑞州師中将軍であり、立場的には花影のほうがだいぶ上のはずです。割と歳(見かけ)の近い女性だからでしょうか?
しかし普通部門のトップが別部門の部下のところにまで相談に行くでしょうか。同じ女性なら冬官長の琅燦のところに行くのではないでしょうか。琅燦はキツそうなので、避けたのかもしれませんが。。。
もし花影が黒幕だとして、その理由は何なのか。
正直全くわかりません。
もしあるとすれば、穏やかな日常を望んでいた花影が、秋官長抜擢によりその日常が崩れてしまった。それを引き起こした驍宗を憎んで、、、といったところでしょうか。しかしながらそんな俗的な理由でここまでの事態を起こすとも考えにくいですよね。
今回は、妄想を膨らませて書いてみました。
このまま波乱もなく、阿選の企みでしたで終わるでしょうか。
それとも、また別の黒幕がいるのでしょうか。
衝撃のラスト予想もしておりますので、よろしければ、、