十二国記【最新考察】 ○○の思うところとは!?

 

 

本記事は十二国記新刊「白銀の墟 玄の月 」考察です。
ネタバレを多々含みますので、まだお読みでない方はお引き返しください。

 

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絵で誰のことが分かってしまいますね(笑)

 

今作では何やら暗躍していそうな琅燦(ろうさん)。

新刊2巻では、天の仕組みについて語っているシーンがありました。

そのシーンは少し難解な言い回しであったため、何を言おうとしていたのか、そして琅燦の真意は何なのかを考察していきたいと思います。

新刊を読みつつ、この考察も読んでいただければ、より理解しやすいかもしれません。

 

琅燦とは

先に琅燦とはどのような人物なのかまとめてみましょう。

初登場は、「黄昏の岸 暁の天」

 

 

冬官長大司空。外見年齢は18〜19歳程の女性。一見飄々としているが恐ろしく博識であり、冬官長の下に存在する無数の工匠(物品作り、呪具作り、新技術探索)のいずれとも話が通じる等、冬官長として彼女以上の人材はないことは確かだった。李斎達とは違い、泰麒を一国の宰輔として厳格に見ており、謀反の可能性等を包み隠さず彼に伝えていた。

「私に言わせると、あんたらが何だって台輔をああも非力な子供みたいに扱うのかわからない。いるんでしょ、饕餮(とうてつ)が」

「言いようによっちゃあ、饕餮以上の化け物なんだよ・・・あの麒麟さんは」

 

 

冬官

造作を掌る部署。ここで製作される呪を掛けられた武器を冬器と呼び、妖魔を撃退する武器になり、唯一神仙を傷つけることが出来る。冬官長=大司空

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琅燦の見た目は18、19歳とあるものの、見た目のわりにすさまじい人物であることが語り口からもわかります。

花影が李斎と話している内容から、驍宗の配下であったことがわかりました。冬官長ということなので当然のことながら仙。しかしいつ昇仙したのでしょう。もしも驕王(きょうおう)の治世からいたとするならば、すでに100年前後は生きているということになり、恐ろしく博識ということもうなずけます。

問題のシーン

ことは泰麒が、阿選が新王として登極するためには、驍宗を見つけ出して禅譲させる必要があると言ったことからでした。そのために王宮に驍宗を連れてこいと。新刊2巻のP.193~P.204のことです。
※なぜ蓬莱歴が長い泰麒が禅譲を知っているのかは置いといて。。。

 

冢宰である張運は、泰麒が驍宗を連れてこいと言い始めたことから、奸計(謀略)であると言います。しかし前例もないので対処方法が全く分からない。と、ここで注目すべき台詞がしれっとでてきます。

まず驍宗を幽閉場所から連れて来なければならず、そのためには阿選にその場所を問いたださねばならない(張運)

驍宗は死んでおらず阿選もそのことは知っているということです。

とにかくどうすれば良いかわからない張運は、隠れていた琅燦に意見を求めます。ここから琅燦の言っていることは、読み飛ばしていると全く理解できません。とても1回では無理です。張運は、この新刊から詳細が分かってきた人物なので、その深いところまではわかりませんが、そこまで賢明な人物でないことは確かなようです。そして、天の仕組みに関してもそこまで詳しいということはない。

 

琅燦がつらつらと並べている言葉を張運や案作は完全には理解できていないようでした。まるであえて難解に喋ることで、理解させないように、泰麒が作り出した流れのとおりに動かすことを目的としていたように。

 

ここで張運=読者という図式が成り立つのではないでしょうか?読者も正直読んでいるもののよく理解はできない。まあ何となく泰麒が嘘を付いているのだろうということは察しがつくが、その真意まではわからず、これからどうなっていくのだろう。。と思うくらいではありませんでしたか?

 

 

言葉の意味

この数ページで琅燦の真意を読み解くのは不可能ですが、琅燦が言っていたことを部分的に読み解いていきましょう。

「天は人間が考えているより、はるかに教条的に動くんだよ。形に拘り手続きにこだわるーー」

「ーー何度も言っているだろう。摂理を動かさないことが肝要(最も重要)なんだ」

 

ここでは、戴の現状が天の望む姿ではないと言っています。天は正当な王が国を治めて、国が繁栄することを望んでると。しかし驍宗は死んではいないものの、自分の意志とは関係なく玉座におらず、戴は荒廃している。こんなことは前例がない。しかし、正常な形(慣例通り)を望む天は、驍宗を天の力で殺すことはできない。そこで驍宗を禅譲させたうえで新たな天命を下す手続きを取ろうとしている。

 

「天命が革(あらた)まる道は2つしかない。1つは王が死ぬこと(中略)もう1つは天が王を見限って位を奪う。つまりは、失道だ」

 

天命が革まる(=次王を選定する)ためには、通常2通りの方法しかありません。

①王が死ぬ
禅譲して位を降りる
⇒他者が殺して命を奪う

②天が王の資格がないと見限る
⇒失道

 

ここで案作は問います。

禅譲の場合、位を降りることが重要ですか。それとも崩御が?」

そんなことを琅燦に聞いても....と思いますが、琅燦は答えます。

「面白いところに目をつけるね。--そう、そこが肝要なところなんだ」

 

何が重要なのかさっぱりわかりません。ここで感じるのは、少し話が逸れ始めているのではないかということです。だから目線をそちらに向けるために同意したのでしょうか?

 

普通は天がおかしくなるとは考えにくい。十二国の世界に住む人にとって、天帝は絶対なのですから。状況はともかく、驍宗が玉座にいないのだから、「失道」を一番に思いつくのでは、とも思いましたが話は禅譲に進んでいきます。

 

長いのでところどころ端折ります。

「過去禅譲した王は多々あるけれど、禅譲したのち即座に命が尽きるとは限らない。(中略)短くても半日、長ければ数日程度の猶予がある。そして、この間に天命が革(あらた)まった例はない。」

「(中略)生命を終えることで天命もまた消滅するのじゃないかな」

 

たった数日のことだろうにとボヤく張運に対して琅燦は言います。

「その『たった数日』が意味深いんだ。禅譲の場合、麒麟は残される。(中略)わずかとはいえ、時間的な遅延があるんだ。--この遅延をどう解釈するべきは悩ましいところだな。そもそも、王が位を降りてから生命を失うまでの期間が一定でないのはなぜなのか」

それがどうした、張運は思った。

 

まさにその通りです。もはや完全に論点がズレています。そもそも「泰麒が嘘をついているのかどうか」という話であったはずなのに、天の仕組みについてという方向に話が行っています。確かに琅燦は博識であるため、そこに考えが及ぶのもわかります。しかしそれをわざわざ張運達に説くでしょうか?

 

しかし案作はノってきます。

ここで琅燦が「だろう」と笑いながら言ったということは、「お、こいついい具合にのってきたな」という感じに思えました。とにかく天が天命を下すルールというものは、以下のようになるのです。

現王が位を降りる or 麒麟が失道する(天命は現王)
 ⇓
天、新しい王の選定に入る(まだ天命は現王)
 ⇓
天、新しい王に天命を下す(天命は新王に移る)
 ⇓
現王、御役御免となって死ぬ

言われてみれば、普通のことに感じられます。これまでの予備知識があるからかもしれませんが、案作も「なるほど」と納得した感じです。

 

しかし、張運がここで話題を元に戻します。

「問題はそれなのになぜ、天は意向を変えたのか、ということだろう。本当にそんなことが起こり得るのか」

 

ですが琅燦にとってはその話の途中だったようです。この次もまとめると以下のようになります。

驍宗に天命が下る
 ⇓
しかし驍宗は玉座におらず、政を放棄状態(天にとっては望まぬ事態)
 ⇓
だが驍宗に非はない(阿選により引き離されているため)
 ⇓
天はルールを第一にするため、天命を変えることはできない(≠失道)
天にとっては、[戴の現状<天のルール]となる
 ⇓
もしも驍宗を殺す or 驍宗に自ら玉座を放棄するよう仕向けると、失道によって天は大手を振って天命を変えることができる。
 ⇓
このまま阿選の天下でいるためには、現状維持しかない

 

ここまで書きだすことによって、天のルールと戴の現状を整理することができました。と、ここで気になる地の文が次に出てきます。

”実は阿選は失敗などしていない。もとより阿選には殺す気などなかった”

実はこの文は、唯一琅燦の心情を描いたものなのではないでしょうか。重要な箇所です。

 

続けて張運は、話の真髄を突いてきます。

「だったら(戴の現状を垣間見れば)王が変わる道理もない。阿選が新王というのは台輔の欺瞞になる」

 

ここからの琅燦の持論も長いので、以下のようにまとめます。

天、戴の現状をみかねて是正に乗り出す。
 ⇓
でも、天は自分で決めたルールを破りたくない..
 ⇓
驍宗に自ら位を降りてもらえば万事解決する
 ⇓
阿選に次王の内定を出して、驍宗に禅譲させよう
 ⇓
天の意志を伝えるのは麒麟しかできないから、泰麒を伝令にしよう

確かに戴の現状を考えれば、天がこのように働きかけてきていると考えるもの一理あります。張運も渋々納得したような感じでした。つまり、琅燦は泰麒の言っていることがあたかも事実であるように張運達に信じ込ませたのです。

 

 

しかしながら多くの人が考えているように、これは事実ではないでしょう。これまでの琅燦の持論が、泰麒の話にうまい具合に合わせているということが、唯一琅燦が口を滑らせた次の台詞からわかります。

「しかも阿選にはほかにも選ばれ得ない理由がある」

 

これは阿選の姓が驍宗と同じ「朴」であることを言っていると思われます。

 

そう、同じ姓の人物が続けて王になることはないという、まさに「天のルール」が存在しているからです。これは、「風の万里 黎明の空」で遠甫が陽子に言っていた内容です。

「ーー天が天命を革(あらた)めるにあたって、同姓の者が天命を受けることはないからじゃ」

「(楽俊が次の塙王になることについて)張姓なら過去の事例からみて、あり得んな。これはやむを得ぬ理(ことわり)じゃ」

 

 

 

 

正直このルールが本当に実在しているかどうかはわかりません。あくまで前例がないというだけだからです。そして、これを明言しているのは遠甫だけです。しかしながら、博識の遠甫がこの場面で嘘を付く理由もなく、事実だと推察します。琅燦がなぜこのことを知っているのかは不明ですが....

 

そして、琅燦の思惑通り、張運は阿選に驍宗を連れてきてもらうように動こうと考えるのでした。阿選の天下が続き、現状通り自分が事実上の王であり続けるために。

 

ここからは考察です。

琅燦のこの言動は、後に出てくる耶利の主公は誰か?というところに結び付くと考えています。そしてその主公=琅燦だと推察します。

 

琅燦は、泰麒が禅譲と言い始めたときに即嘘だとわかったのでしょう。理由は前述したとおり、阿選の姓の問題です(プラス今までの振る舞い)。もしも琅燦の願いが国、民の救済、驍宗の復権だとすれば、泰麒との利害は言っている通り一致します。

 

しかし謎は謎を呼びます。

①国や民の救済が願いなら、なぜ今まで行動できなかったのか?

②耶利とはどこで知り合ったのか?

これは現状ではわかりようはありません。妄想はできますが考察は無理です。

 

3、4巻発売まで残すところあと1週間です。

楽しみでもあり、ああでもない、こうでもないと考えることができる期間も残りわずかとなっていることが寂しくも感じます(笑)

 

衝撃のラスト予想もしておりますので、よろしければ、、

juunikokuki.hatenablog.com