本記事は十二国記新短編集 1話無料プレゼントの感想です。
「白銀の墟 玄の月」発売されてからはや1年。待ちに待った短編集の1話を読むことができました。今回も登場キャラクター内情表現が素晴らしく、天とは何なのか?という命題も問われている話になっています。
そしてなんと、あの方もあの人も再登場です!
ネタバレを多々含みますので、まだお読みでない方はお引き返しください。
2020年12月12日、ついにこの時がやってきました!
2019年10月に「白銀の墟 玄の月」発売され、その帯についているQRコードから応募することで無料で次の短編集の1話がプレゼントされると告知されてからはや1年。待望の1話が配信されました!
次回短編集のタイトルは、『幽冥の岸』。
今回配信された内容と非常にマッチしている内容でした。この記事では、その内容を紐解きつつ、感想を書きたいと思います。
話の概要
今回配信された1話の内容は、「白銀の墟 玄の月」に関する話でした。
本当に簡潔に話の内容をまとめます。
物語終盤で驍宗を取り戻し、鴻基から脱出した後に泰麒が李斎、耶利とともに蓬山に向かっているところから話は始まります。
泰麒は蓬莱から戻ってきたときと同じように再び怨詛に侵されており、李斎は前回同様西王母に助けを求めます。西王母により怨詛が取り払われ(ひと悶着ありましたが)、延麒も見舞いに来る中、李斎は慶に行き、陽子に事の顛末を報告しに行くよう延麒から命じられます。
李斎と入れ替わりで景麒も泰麒の見舞いに出向き、景麒が来たことにより泰麒も回復していきました。
最後に泰麒は必ずや戴国に戻り、驍宗とともに民のため、責務を全うすることを誓うのでした。
冒頭の岸辺のシーン
この岸辺のシーンは、はじめ「魔性の子」終盤での泰麒の内情を表していると思いましたが、どうやら違うようでした。
泰麒は、「白銀の墟 玄の月」4巻終盤で昏睡状態になっています。岸辺に打ち上げられている死体の描写は、阿選との戦いで死んでいった人たちを表しているのだと思います。
泰麒は犯した罪(後述)にさいなまれながら、暗黒の岸辺で一人苦しんでいたのです。
蓬山でのやり取りと西王母の再登場
泰麒と怨詛
李斎と耶利は昏睡状態の泰麒を蓬山で治療してもらうために運んでいきました。
かつて蓬莱から帰還した時と同様に、碧霞玄君(玉葉)は事前に説明していなくとも、泰麒らを出迎えました。女仙の中にはかつて泰麒の世話をしていた禎衛も登場します。
しかし、禎衛が発した言葉は衝撃でした。
再びこれほどの怨詛が泰麒にーーーー
泰麒は驍宗奪還の際、兵士を殺傷してしまいました。
つまり被害者と加害者の関係ができてしまったのです。被害者は加害者を恨む。それが再び泰麒に怨詛が降りかかることにつながってしまったのです。
本来麒麟は血を忌み、戦うことも困難であるため、どうしても戦わなければならない場合は使令を使役します。そして何より守るべきはずの自国の民を自らの手で傷つけてしまった。あの状況、李斎達にとってはありがたい状況でしたが、麒麟としては許されざる行動であったということなのです。
碧霞玄君は、前回同様西王母に助けを求めます。まさか西王母が再登場するとは思いませんでしたね。
西王母の言葉の真意
これはもはや治癒ならぬ
相変わらず無機質な声で西王母は告げます。
碧霞玄君と李斎の必死の嘆願により何とか今回は不問に処されることとなり、治療をしてもらえることになりました。しかし西王母はさらに告げます。
この罪は宿痾(しゅくあ)となって終生泰麒を苦しめるであろう
今回はこの「宿痾」という単語がキーとなっていそうです。
「宿痾」とは、「長くなおらない病気」という意味です。非常に難しい言葉ですが、どのようなことを表しているのでしょうか?怨詛は払うと言っているのになぜ今後も泰麒は苦しむのか?
泰麒が兵士を殺めてしまったことは、一方から見れば仕方のないこと、しかし反対側から見ればただの殺傷。そしてこの世界から見れば麒麟が人を殺めることは許されざる禁忌。泰麒の性格もあり、今後泰麒はこの葛藤に終生苦しんでいくこととなる。これを「宿痾」という言葉に表したのかなと思います。
使令はどうなった?
長らく登場していないなかった使令についても触れられています。
最後に使令を預けてから10か月経過していたようですね。使令の浄化については完了したとのこと。一つ意外だったことは、時間がかかったのは傲濫ではなく、汕子の方であったことでした。
碧霞玄君曰く、浄化に時間はかからないが、女怪の心得を一からたたきこむことに時間がかかったとのこと。確かに魔性の子では暴走状態でした。汕子は女怪のなかでもかなり苦労人なので、できるだけ報われてほしいものです。なにより泰麒のもとに使令は無事戻ったようです。
慶での再会
李斎は延麒に命じられ、慶国に報告に行きます。そこでは陽子が待っており、おなじみの慶の面々も再登場しました。1年経って成長した圭圭も頼もしくなっていました。
陽子と李斎の会話の中で、陽子は泰麒の苦しみを理解していました。蓬莱(日本)では武器を取って人を殺しあうようなことは自分の周りにはなく、あったとしても他人事だった。そして人を殺めるということは重罪であり、必ず罰を受けると。陽子も泰麒も蓬莱出身なので、人を殺めれば罰を受けることは当然と考えていますし、泰麒とって罰があることはある意味救いにるかもしれないということです。
西王母の言う「宿痾」とはこの自らの罪を許しがたいと感じ続けることなのだと思います。
景麒との邂逅
景麒は李斎と入れ替わりで蓬山に向かいました。ここで久しぶりに泰麒と再会しますが、景麒は相変わらずでしたね(笑)。
しかし景麒のいつまでも泰麒を子ども扱いせず、しっかりと説く姿勢により、泰麒は徐々に回復していくのでした。まだ何も終わっていない。泰麒は載をこれから立て直す必要があり、景麒はそれを思い出させてくれたのです。
最後には、泰麒は黄海に行き、使令を増やすとまで言っていました。泰麒自身が足りないものを認知し、さらに成長しようとしていることがわかります。
驍宗との決意
驍宗も泰麒も初登場から見るとずいぶん変わったと思います。多くの血が流れ、人が死んでしまったが、せめて残された民のため、耐え忍んでよかったと思われるような国を作っていく。
ついに二人がしっかりと向き合い、互いの責務を全うしていくことが明確に表現されたと思います。願わくば、立て直し、平穏を取り戻した載国の話も見てみたいですが、それは今後のお楽しみとしておきましょう。
短編集の発売日は?
短編集の発売日についての情報は残念ながら解禁されませんでした。残り何話が収録されるかも発表はありませんので、こちらは気長に待ちましょう。
また、プレゼントページへのアクセス期限は【2021年6月11日(金)17:30迄】となっていますので、事前に応募している方は、忘れないように読んでください。
次回以降もう少し掘り下げた考察もできればと思います。