2023.2.17に公開された「アントマン&ワスプ クアントマニア」。
MCUフェーズ5の始まりであり、征服者カーンが映画初登場する重要な作品です。
今回はそんな「アントマン&ワスプ クアントマニア」劇中に出てきた分裂のシーンについて解説と考察をしていきたいと思います。
ネタバレを含みますので、映画未試聴の方はご注意ください。
注目のシーンは?
劇中中盤にキャシーを人質に取られたスコットが、カーンと取引をしました。
カーンの欲しているエネルギーコアを手に入れるために奮闘することになりますが、その場面ではスコットが次々に分裂し、無数に増えていきました。そしてワスプも同様に無数に分裂していきますが、スコットと接触に無数の分裂体は消えました。
「シュレーディンガーの猫」という単語も飛び出し、観ている人にとっては、どうしてスコットやワスプが増えていったのか、そしてなぜ二人が出会った瞬間に分裂体が消えたのかわからなかったことでしょう。実はこのシーンは量子力学の解釈の一つコペンハーゲン解釈というものが表現されたシーンであると考えられます。
コペンハーゲン解釈とは?
コペンハーゲン解釈は、量子力学の解釈の一つで、1920年代にデンマークのコペンハーゲン学派によって提唱されたものです。量子力学では、物理系の状態は確率的に決まることが多く、物理現象の解釈には古典物理学とは異なるアプローチが必要です。
コペンハーゲン解釈は、物理系が観測されるまで、その状態は決定されていないと考えます。具体的には、物理系が状態の重ね合わせにあるとき、観測をするまではその状態は不確定であり、観測によって状態が確定されます。この状態の重ね合わせとは、物理系が異なる状態に同時に存在することを意味します。
また、コペンハーゲン解釈では、観測によって状態が確定するまで、物理系の状態は波動関数によって表されます。波動関数は確率振幅を表し、観測をすることで波動関数が崩壊し、物理系が確定した状態になります。
例えば、猫が箱に入っていて、その箱の中に放射性物質がある場合を考えます。この場合、放射性物質が崩壊するかしないかは確率的に決まります。コペンハーゲン解釈では、猫の状態も放射性物質の状態と同様に、観測されるまでは確定しておらず、猫が生きているか死んでいるかは確率的に決まると考えます。
観測者が箱を開けて猫の状態を確認するまでは、猫の状態は生きているか死んでいるかが重ね合わせの状態にあるとされます。
コペンハーゲン解釈は、量子力学における基本的な解釈の一つであり、その後の解釈の発展にも大きな影響を与えました。
つまりどういうことだってばよ?
量子力学の話なのでよく分かりませんでしたよね。
上記の猫に関する内容が、いわゆる「シュレーディンガーの猫」というものです。
つまり、ざっくり簡単に言うと、粒子の位置や状態は、何かに観測されるまで、無数の可能性として存在する。ということです。
例えば、あなたとあなたの母親が家の中で別々の場所いたと仮定しましょう。あなたは自室、母親はキッチンにいるとします。
その場合、キッチンにいる母親は、料理をしているかもしれないし、テレビを見ているかもしれないし、スマホをいじっているかもしれません。つまり、無数の可能性として存在していることになるのです。
実際には普通に料理をしていたとしても、あくまで可能性として存在します。
あなたが実際にキッチンに足を運んで、母親が料理をしているところを「観測」するまで、その可能性は確定しないのです。
これを劇中に当てはめてみると、スコットがエネルギーを手に入れるためにいた空間には、スコット以外の人物はいませんでした。そのため誰からも観測されないので無数の可能性が同じ空間に存在したのだと考えられます。
サーティワンの制服を着たスコットも、スコットの可能性としては存在するためあの場所にいたのだと考えられる。しかし、ワスプ(他者)から観測されたことによって、お互いひとつの存在に収束したのではないでしょうか?
どうしてこのシーンが描かれたのか?
そこまで深い意味があったのかはわかりませんが、アントマンは量子力学がテーマの一つになっている作品です。
シュレーディンガーの猫に関しては、前作のアントマン2でも「ゴースト」に対して、存在の可能性を問う形でも考えられます。
映画の演出として、分裂は絵になりますし、直後に出てくるスコットの山を描くための伏線として利用したのだと思います。
とはいえ、量子力学を見事に作品に盛り込んでくる脚本は素晴らしいですね。